糖尿病の運動療法 出来ることから始めよう
こんにちは。院長のしながわ内科・循環器クリニック院長の品川弥人です。
今回は糖尿病の運動療法についてお話しします。
糖尿病の治療は大きく分けると食事療法・運動療法・薬物治療の3つに分かれます。運動は糖尿病治療の一角を占めるとても大事なものなのです。
運動療法は以下のような効果があります。
- 血糖や脂肪を燃焼させ、血糖値が下がる。
- 長期の効果としてインスリン抵抗性が改善する。
- 筋力を維持し、体力低下や骨粗鬆症の予防になる
- 血圧や脂質異常の改善になる。
- 認知症の予防になる
- ストレスやうつ状態の改善になる
次に運動療法の種類ですが、
① 有酸素運動: 歩行やジョギング、水泳などの全身運動
②レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、スクワット、腕立て伏せなどの筋力をつける運動
の2種類に分けられます。
ちなみに水中歩行は有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされた運動であり、膝への負担もかからないことから、肥満を合併した糖尿病患者さんや膝が痛くて歩くのが難しい方にはとても有効といわれています。
次にそれぞれの運動への取り組み方です。
①有酸素運動
・中強度(中くらいの強さの運動)を週に合計150分以上、週に3回以上
中強度とは、運動時の心拍数が50歳未満で100~120拍/分、50歳以降で100拍/分以内くらいと言われています。
・歩行であれば1回15-30分、1日2回、1日1万歩程度、週3回以上が理想です。
②レジスタンス運動
・週に2-3回(2日連続しないように)。数種目のレジスタンス運動を1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返すことが勧められています。
また、3つ目の運動として高齢者の糖尿病患者さんに推奨されるバランス運動というものがあります。
具体的には片足立ち、ステップ練習、体幹のバランス運動などです。これはサルコぺニア(筋力低下による体力の低下)予防に有効で、特に片足立ち運動がおすすめです。片足を5㎝くらい浮かして、片足で立つ運動を左右1分づづ、1日3回くらい行うと筋力低下防止になります。
さて、実際に運動をしましょうと言っても、時間が取れない、膝が痛い、腰が痛いなど、様々な理由で実践できないという方が多いのではないでしょうか?
大事なことは自分の日常生活や体力に合わせて、とにかくできることをやってみることです。
例えば毎日通勤をされている方であれば駅を一つ手前で降りて歩く、毎日買い物に出かける方であれば、少し遠めのお店まで歩いていくなど、強制的に歩かなければいけないルールを作る。エレベーターは使わずになるべく階段を使うなどもお勧めです。
筋力に自信のない方であれば、椅子へ座る、立ち上がる動作繰り返す運動だけでも筋力維持に役立ちます。また、膝の痛い方であれば椅子に座って膝をゆっくり曲げ伸ばしする運動もなども良いでしょう。
とにかく自分にできる運動を小さなことでも良いので始めて見て、習慣になるまで継続することです。始めた運動で血糖値が下がった、筋力がついた、体調が良い、など少しでも良い効果が現れれば、そこからさらに新しい運動への意欲が湧いてくると思います。
是非、何か一つでも良いので習慣として毎日の生活に組み入れてみて下さい。