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急性心筋炎を疑う症状とは? ~早期発見のためにできること~

2021/04/20更新

こんにちは。院長の品川弥人です。

今回は急性心筋炎という病気を疑うポイント、早期発見のために必要なことについてまとめてみました。

急性心筋炎とは、心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の動きが悪くなって心不全を起こしたり、危険な不整脈を起こす病気です。重症度は様々で軽症例では自分では気付かないうちに発症し、自然に治ってしまうこともありますし、劇症型心筋炎と呼ばれる重症例ではショック状態から心停止に至ることも珍しくありません。年齢に関係なく子供から大人まで発症する可能性がありますので注意が必要です。この病気は早期発見・早期診断がとにかく大事なのですが、心筋炎を疑ってかからないと見過ごしてしまうことが多いので、それが怖いところです。

●心筋炎が発症する状況

この病気はまず一般的には普通のかぜ様症状(悪寒,発熱,頭痛,筋肉痛,全身倦怠感)やおなかの風邪(悪心・嘔吐・下痢などの症状)がまずおこり、その数時間から数日後に胸・心臓の症状がでてきます。一般的には数日以降に発症することが多く、風邪症状と心臓の症状にタイムラグがあることも一つのポイントになります。

●症状と診断

心臓の症状とは、胸の痛み、動悸、息苦しさなどです。重症な例だと酷い倦怠感や冷や汗、意識障害などを伴うこともありますがすべて非特異的な症状です。軽い胸の症状は気管支炎などでも起こる症状なので、症状だけで心筋炎と診断することはできないのです。診断するためには必要なことは病院で診察をしてもらい、心電図や胸のレントゲンを確認してもらうことです。レントゲンで心不全を疑う所見や、心電図で危険な不整脈や心筋傷害を表す所見があれば診断の手がかりになります。心エコーで心臓の動きを確認したり、採血で心筋の傷害を表す心筋トロポニンなどを見て、確定診断のためには心臓カテーテル検査も必要になります。

●原因

多くの心筋炎は風邪のウイルス感染後に心臓に炎症が起きることによって起こります。ほとんどの場合は風邪だけで治るのですが、風邪のウイルスが心臓の筋肉で炎症を起こすと心筋炎が発症するのです。一般に発症するかどうかに風邪自体の程度の強さは関係ありません。軽い風邪の後でも発症することがあります。コクサッキーウイルスをはじめとした多くの風邪ウイルスが原因となり、インフルエンザウイルスやCOVID-19コロナウイルスでも心筋炎の発症が報告されています。また、ウイルス感染以外にも細菌や真菌(カビ類)、自己免疫、薬剤、アレルギー、膠原病などが原因となって発症する場合もあります。そのような原因の場合には先行する風邪症状は必ずしも認められません。

●経過

心筋炎は気付かないうちに発症し、自然に治ってしまう軽症例から、ショック状態となり命に係わる劇症型まで様々な重症度があります。多くの心筋炎は重症例でも数週間のうちに炎症が収まり心臓の動きは回復しますが、一部には炎症が長く続いて、慢性心筋炎から慢性心不全に移行したり、心臓の動きが回復せずに命を落としたり、心臓移植を考えないといけない状況になることもあります。

まとめです。
急性心筋炎とは一般的に風邪症状の後に心臓に炎症が起こる病気です。軽症例では軽い症状だけで自然に治ってしまいますが、重症例だと心不全や危険な不整脈によって命にかかわる病気です。子供から大人まで幅広く発症する可能性があります。大事なことは重症例の早期発見です。そのためには“心筋炎疑うことが第一”です。具体的には、のどの風邪、おなかの風邪症状のあとに、動悸、息切れ、胸の痛み、息苦しさなどの胸の症状が出てきて、普通じゃないな、と思ったときにクリニックや病院で心電図と胸のレントゲンを確認してもらうことです。これが診断の手がかりになります。

風邪症状の後には、まれですが心筋炎の発症があることを覚えておいてください。

急性心筋炎