その息切れ・むくみは年のせい? 心不全のサインの見分け方を循環器専門医が解説 – 町田市 – しながわ内科・循環器クリニック
結論:「動いたときの息切れの悪化」は、年のせいと決めつけないでください
結論からお伝えします。加齢による体力低下と、心不全のサインを見分ける最大のポイントは「変化のしかた」です。以前は平気だった坂道や階段で息が切れるようになった、足のむくみが夕方だけでなく続くようになった、数日で2〜3kg体重が増えた、横になると息苦しい——こうした「以前との違い」がある場合、それは年のせいではなく、心臓からのサインである可能性があります。
心不全はゆっくり進むため、症状に体が慣れてしまい、「年だから」「運動不足だから」と見過ごされがちです。しかし、サインの段階で見つかれば、薬と生活の調整で進行を抑えられる病気です。この記事では、セルフチェックの方法と、受診したら何がわかるのかを解説します。
文責・監修:品川 弥人(しながわ ひさひと)院長
・ 医学博士/日本循環器学会 循環器専門医/日本内科学会 総合内科専門医
・ 北里大学病院 循環器内科の心不全診療グループに所属し、慢性心不全の専門診療に従事。北里大学医学部循環器内科学 助教を経て、ドイツ・ビュルツブルグ大学心不全センターに留学(日本心臓財団・バイエル薬品 海外留学助成受賞)
・ 一般内科医向けの解説書『プライマリケア医で診る慢性心不全』を出版。2015年から延べ255回、医師向けに心不全・高血圧の講演を実施(全国配信のWeb講演3回を含む)【要確認:書籍の出版社・発行年】
2026年;プライマリケアで診る慢性心不全改訂2版 中外医学社
2022年:プライマリケアで診る慢性心不全 中外医学社
・ 日本循環器学会・日本心臓病学会・日本心不全学会 所属/医療法人社団仁悠会 理事長
30秒セルフチェック
~いくつ当てはまりますか?~

- 以前は平気だった坂道・階段・買い物で、息が切れるようになった
- □ 同年代の人と歩くと、ついていけなくなった
- □ 靴下の跡がくっきり残る。すねを指で押すと、へこみが戻るのに時間がかかる
- □ 数日〜1週間で2〜3kg、急に体重が増えた
- □ 横になると息苦しい・咳が出る。枕を高くする(体を起こす)と楽になる
- □ 夜中に息苦しくて目が覚めることがある
- □ 疲れやすく、だるさが取れない。食欲が落ちた
- □ 尿の量が減った。夜間のトイレが増えた
1つでも当てはまり、それが「以前との変化」として現れているなら、一度心臓の検査を受ける価値があります。特に、安静にしていても息苦しい・急激に悪化している場合は、様子を見ずに早急に受診してください。
なぜ「年のせい」と紛らわしいのか
心不全の初期症状(労作時の息切れ・疲れやすさ)は、加齢や運動不足による体力低下と見た目がそっくりです。違いは進み方にあります。加齢による変化は年単位でゆるやかですが、心不全のサインは数週間〜数ヶ月の単位で「できていたことができなくなる」形で現れます。周囲の同年代と比べて明らかに息が上がる、半年前の自分と比べて明らかに歩ける距離が縮んだ——この比較の視点が見分けの鍵です。ご本人は慣れて気づきにくいため、ご家族が「最近、歩くのが遅くなった」「横になって寝なくなった(椅子で寝ている)」と変化に気づくケースも多くあります。気になる変化があれば、ご家族からのご相談もお受けしています。
それぞれの症状が意味すること
動いたときの息切れ(労作時呼吸困難)
心臓のポンプ機能が低下すると、体を動かしたときに必要な血液を送り切れず、肺に血液がうっ滞して息切れが起こります。最も早く現れやすいサインです。
足のむくみ・急な体重増加
心臓の力が落ちると、血液が静脈側に滞り、水分が組織にしみ出してむくみになります。むくみとして目に見える前に、まず体重が増えます。数日で2〜3kgの増加は、脂肪ではなく水分がたまっているサインです。
横になると苦しい・夜間の息苦しさ(起座呼吸・発作性夜間呼吸困難)
横になると下半身の血液が心臓に戻りやすくなり、弱った心臓では処理しきれず肺がうっ血して息苦しくなります。「体を起こすと楽になる」「気づくと椅子で寝ている」は、心不全がある程度進んだ重要なサインです。早めの受診をおすすめします。
息切れの原因は心臓だけではありません
~だから検査で見分けます~
息切れ・むくみは、心不全のほかにも、肺の病気(COPD・喘息など)、貧血、腎臓の病気、甲状腺の病気などでも起こります。自己判断で決めつけず、検査で原因を確かめることが出発点です。
当院は循環器内科と呼吸器内科の両方を診療しており、「心臓か、肺か」を一度の受診で両面から評価できます(原因が紛らわしい息切れの診療で、これは大きな利点です)。検査は院内で完結し、心エコー検査(年間1,499件実施)で心臓のポンプ機能をその場で確認、血液検査でBNP/NT-proBNP(心臓への負担を映す数値)・貧血・腎機能・甲状腺まで一度に調べられます。必要に応じて心電図・胸部レントゲン・ホルター心電図(年間556件)も行います。
結果はその場でご説明します。「心配ない」とわかることも、受診の大きな価値です。実際、検査で異常がなく安心して帰られる方も少なくありません。
特にご注意いただきたい方
(心不全のリスクが高い方)
次に当てはまる方は、同じ息切れ・むくみでも心不全である可能性が高くなります。セルフチェックの結果が1つでも該当したら、早めの受診をおすすめします。
- 高血圧を長年指摘されている方・治療を中断している方(心臓に負担がかかり続けています)
- 心筋梗塞・狭心症の治療歴がある方(心筋のダメージが心不全の下地になります)
- 心房細動などの不整脈、心臓弁膜症を指摘されたことがある方
- 糖尿病・腎臓病のある方、健康診断で心電図異常・心拡大を指摘されたことがある方
これらは心不全の「原因になる病気」です。原因の治療と心臓の状態確認を並行して行うことで、心不全への進行そのものを抑えられます。各疾患の解説は当院の高血圧・狭心症/心筋梗塞・動悸/不整脈の各ページもご覧ください。
受診タイミングの目安
- 今すぐ〜当日受診:安静にしていても息苦しい/急激に悪化している/胸の痛み・冷や汗を伴う(救急要請もためらわないでください)
- 数日以内の受診:セルフチェックに複数該当/夜間の息苦しさ・起座呼吸がある/数日で2〜3kgの体重増加
- 落ち着いて受診:軽い息切れの変化のみ/健診で心電図異常の指摘のみ(症状なし)——ただし先延ばしにせず、2週間以内を目安に
受診の流れと通いやすさ
当院はWEB順番予約(当日順番制)です。順番が近づいてからのご来院で待ち時間を抑えられます。WEB問診をご利用いただくと、症状の経過を事前にお伝えいただけるため診察がスムーズです。駐車場・バリアフリー対応で、ご高齢の方の通院にも配慮しています。検査の結果、心不全やその予備軍とわかった場合は、現在624名の慢性心不全の患者様を管理する体制で、そのまま継続的な管理へ移行できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 息切れやむくみは何科を受診すればいいですか?
A. まず循環器内科をおすすめします。心臓が原因かどうかの見極めが最優先だからです。当院は呼吸器内科も診療しているため、肺が原因の場合もそのまま診療を続けられます。
Q2. 症状はないのですが、健康診断で心電図異常・心拡大と言われました。受診すべきですか?
A. 受診をおすすめします。心不全は症状が出る前の段階から予防的に介入できる病気です。心エコーで心臓の状態を確認し、経過観察でよいのか、治療を始めるべきかを判断できます。
Q3. むくみはあるけれど息切れはありません。心配ないですか?
A. むくみだけの場合、腎臓・肝臓・甲状腺・薬の影響・静脈の問題など心臓以外の原因もあります。いずれにせよ原因の確認が大切ですので、続くむくみは一度ご相談ください。
Q4. 市販のむくみ取りや漢方でしのいでいます。だめですか?
A. 原因がわからないまま症状だけを抑えると、心不全のサインを覆い隠してしまう恐れがあります。まず原因を確かめてから、必要な治療・対処を選ぶ順番にしてください。
Q5. 検査は当日にできますか?費用はどのくらいですか?
A. 血液検査・心電図・レントゲンは当日に実施できます。心エコーとホルター心電図は原則予約制になりますが、当日に検査が可能な場合もあります。費用は検査内容によりますが、目安として心不全での一般採血+心電図+胸部レントゲン(2方向)で3,180円(3割負担の場合)、心エコー2940円(3割負担の場合)、ホルター心電図5,767円(3割負担の場合)です。それぞれ診察料は別になります。
Q6. 高齢の親を受診させたいのですが、本人が「大丈夫」と言って行きたがりません。
A. よくあるご相談です。「病気を探しに行く」のではなく「年のせいかどうかを確かめに行く」とお伝えいただくと、受け入れられやすいことがあります。ご家族が先に来院してご相談いただくことも可能です。付き添いの際は、いつから・何ができなくなったかをメモしてお持ちいただけると診察に役立ちます。