家族が心不全と診断されたら?ご家族ができるサポートを循環器専門医が解説 – 町田市 – しながわ内科・循環器クリニック
結論:ご家族にできる、いちばん大切な3つのこと
親御さんや配偶者の方が心不全と診断されたとき、ご家族にできる最も大切なことは、次の3つです。
・ ① 毎日の小さな変化に気づくこと(体重・むくみ・息切れ・元気のなさ)——悪化のサインは、そばにいる家族が最初に気づけます
・ ② 薬と通院の継続をさりげなく支えること——心不全の悪化の多くは、薬の中断・飲み忘れと塩分の増加から始まります
・ ③ ひとりで抱え込まず、医師に相談すること——ご本人抜きの、ご家族だけのご相談もお受けしています
「本人は大丈夫と言うけれど心配」「何をしてあげればいいのかわからない」——このページは、そんなご家族のために書きました。心不全は、ご本人の自己管理とご家族の見守り、そして医療者の三者で支える病気です。ご家族は治療チームの一員です。
文責・監修:品川 弥人(しながわ ひさひと)院長
・ 医学博士/日本循環器学会 循環器専門医/日本内科学会 総合内科専門医
・ 北里大学病院 循環器内科の心不全診療グループに所属し、慢性心不全の専門診療に従事。北里大学医学部循環器内科学 助教を経て、ドイツ・ビュルツブルグ大学心不全センターに留学(日本心臓財団・バイエル薬品 海外留学助成受賞)
・ 一般内科医向けの解説書『プライマリケア医で診る慢性心不全』を出版。2015年から延べ255回、医師向けに心不全・高血圧の講演を実施(全国配信のWeb講演3回を含む)【要確認:書籍の出版社・発行年】
2026年;プライマリケアで診る慢性心不全改訂2版 中外医学社
2022年:プライマリケアで診る慢性心不全 中外医学社
・ 日本循環器学会・日本心臓病学会・日本心不全学会 所属/医療法人社団仁悠会 理事長
まず知ってほしいこと
~心不全は「管理で経過が変わる」病気です~

心不全は心臓が止まる病気ではなく、心臓のポンプ機能が弱り、悪化(急性増悪)と改善を繰り返しながら進行する病気です。重要なのは、悪化の多くに前触れがあり、その段階で手を打てば入院を避けられることが少なくない、という点です。つまり「前触れに気づける人」が近くにいるかどうかで、経過が変わります。病気の全体像は「心不全とはどんな病気?」で詳しく解説していますので、ぜひ一度お読みください。
ご家族が気づける
「悪化のサイン」チェックリスト
ご本人は症状に慣れてしまい、変化に気づきにくいものです。次のサインは、そばで見ているご家族のほうが先に気づけます。
- □ 体重が1週間で2〜3kg増えた(体重計に乗りたがらない場合は、顔や足のむくみ・ズボンのきつさで代用)
- □ 靴下の跡が深く残る、すねを押すとへこみが戻らない
- □ 歩くペースが遅くなった、途中で立ち止まって休むようになった
- □ 横になって寝なくなった(椅子やソファで寝ている、枕を高くしている)
- □ 夜間にトイレや咳で何度も起きている
- □ 食欲が落ちた、好物を残す、元気・口数が減った
- □ 薬の残数が合わない(飲み忘れ・自己中断のサイン)
複数当てはまる場合、悪化が始まっている可能性があります。次の受診を待たず、早めにご連絡・ご受診ください。早い段階なら、お薬の調整で立て直せることが多くあります。
日常でできるサポート
~頑張りすぎない工夫を~
体重測定を「習慣」にする手伝い
毎朝、排尿後・朝食前など同じ条件で体重を測り、記録する——これが心不全管理の基本です。ご本人任せで続かない場合は、「一緒に測る」「カレンダーに書くだけ」など、仕組みで支えてください。当院ではオリジナルの血圧手帳をお渡ししており、体重・血圧の記録は診察の大切な資料になります。
減塩は「取り締まり」にしない
塩分の摂り過ぎは悪化の引き金ですが、食べる楽しみを奪う取り締まりになると長続きせず、ご本人との関係もぎくしゃくします。汁物を1日1杯にする、麺類の汁を残す、漬物・加工品を減らす、香辛料や酸味で味を補う——できることから少しずつ、が原則です。具体的な目安は診察でご本人・ご家族と一緒に調整します。
薬の継続を支える
心不全の薬は、症状がなくても心臓を守るために飲み続ける薬です。「調子が良いからやめた」が最も危険な悪化の入口になります。お薬カレンダーや一包化(薬局にご相談ください)で飲み忘れを減らし、残数が合わないときは責めずに、診察時に教えてください。飲みにくさに合わせて処方を調整できます。
感染症から守る
インフルエンザ・肺炎などの感染症は悪化の大きな引き金です。ご本人のワクチン接種に加え、同居のご家族の接種・手洗いも有効な支援です。当院は風邪症状の方の外来時間を分けて運用しており、通院時の感染リスクにも配慮しています。
「連絡する目安」を、先に決めておきましょう
悪化のサインに気づいたとき、様子を見るべきか受診すべきか、その場で迷わないために、当院では「何日で体重が何kg増えたら連絡」「どんな症状が出たら受診」という目安を、診察時にご本人・ご家族と一緒に決めておくことをおすすめしています。目安が決まっていると、ご家族の心理的な負担は大きく減ります。なお、安静にしていても息苦しい・唇や顔色が悪い・意識がもうろうとしている場合は、ためらわず救急要請してください。
通院のサポート
~同伴時に教えていただきたいこと~
診察に同伴いただける場合、次のメモがあると診療の質が大きく上がります。①いつから・何ができなくなったか(例:買い物で休憩するようになった時期)、②食事と塩分の様子、③薬の飲み忘れの実際、④夜の眠り方の変化、⑤ご家族から見て気になること。ご本人の前で言いにくい内容は、メモを受付でお渡しいただく形でも構いません。遠方にお住まいのご家族には、オンライン診療(curon)の同席や、お電話でのご相談の形もご案内できます。
通院が難しくなってきたら
~訪問診療という選択肢~
心不全が進むと、通院そのものがご本人の負担になる時期が来ます。「通えなくなったら診てもらえない」という心配は不要です。当院は訪問診療を行っており、現在45名の訪問診療患者様のうち18名が慢性心不全の患者様です。住み慣れたご自宅や施設で、悪化予防と早期対応を続けられます。通院がつらそうになってきた段階で、切り替えの時期をご家族からご相談ください(訪問診療に可否についてはお問い合わせください)。外来〜オンライン〜訪問と、状態に合わせて診療の形を変えられることが当院の体制です。介護保険サービスをご利用の場合は、ケアマネジャーとも連携して療養を支えます。
ご家族自身のことも、大切にしてください
心不全の見守りは、年単位の長い伴走です。ご家族が疲れ切ってしまうと、支えは続きません。すべてを完璧にやろうとせず、「体重・薬・変化への気づき」の3点に絞る。困りごとは診察で医療者に渡す。ご家族の負担そのものも、遠慮なくご相談ください。それを一緒に考えるのも、かかりつけ医の仕事です。
よくある質問(FAQ)
Q1.本人が「大丈夫」と言って受診したがりません。どうすれば?
A.「病気を探しに行く」ではなく「年のせいかどうか確かめに行く」「検査だけしてもらおう」という誘い方が受け入れられやすいことがあります。健康診断の結果を口実にする方法もあります。まずご家族だけでご相談いただき、作戦を一緒に考えることもできます。
Q2.遠方に住んでいて、様子を頻繁に見に行けません。
A. 電話で「よく眠れている?」「体重は測ってる?」と聞くだけでも見守りになります。帰省時に体重計・お薬カレンダーを整えるのも有効です。診療の状況をご家族と共有する方法(お薬手帳の写真共有、オンライン診療の同席など)もご相談ください。
Q3.薬の管理が心配です。認知症の傾向もあります。
A.一包化・お薬カレンダー・服薬のタイミング調整など、続けやすくする方法があります。状況を教えていただければ、処方の工夫と薬局・介護サービスとの連携で支えます。抱え込まず、まず現状をお聞かせください。
Q4. 救急車を呼ぶべきか迷ったときの目安はありますか?
A. 安静にしていても息苦しい、横になれないほど苦しい、唇や顔色が悪い、冷や汗、意識がおかしい——これらは救急要請の目安です。このよう場場合には無理に様子を見ず、救急要請をためらわないでください。日中の判断に迷う症状は当院にお電話ください。
Q5.介護保険は使えますか?主治医意見書はお願いできますか?
A.心不全で日常生活に支援が必要になった場合、要介護認定の申請ができます。申請に必要な主治医意見書は当院で作成します。初めての方はまずは高齢者支援センターをご案内しますので、申請を考え始めた段階でご相談ください。
Q6.家族だけで相談に行ってもいいですか?
A. はい、お受けしています。ご本人の受診前の作戦相談、通院中の様子の共有、訪問診療への切り替え相談など、ご家族だけのご相談も歓迎です。